モルフォチョウとヒョウホンムシ
蝶の美しさは人を魅了して止みません。
この世の物とは思えない、艶やかな色と不可思議な模様をした美しい翅。その翅を揺らしながら、優雅に、どこか儚く飛ぶ姿・・・。
中でも僕のお気に入りは(月並みですが)世界一美しい蝶と呼ばれるモルフォチョウの仲間で、「スルコウスキーモルフォ」と「アオタイヨウモルフォ」です。
Morpho、すなわち「美しい」を意味するギリシャ語を冠するのも頷けます。太陽の光に煌めく宝石のような翅。どうしてこのような色を持つに到ったのか。進化という二文字だけでは納得できない、神の介入すら疑わせます。
そんな蝶の美しい姿をずっと留めておきたいと人が思うのも無理はなく、標本コレクターが世界中にいることもまた当然のことでしょう。中には数百万円の値が付く物もあるそうです。しかし、それだけの価値が認められるほどの魅力に溢れていることもまた事実です。
ですが今日の本題はそんな美しい蝶やその標本ではありません。ごめんなさい。
むしろ対象にある存在と言ってもいいでしょう。嫌悪感を煽る見た目と、人に害成す生態。そう、害虫です。我ながらまた害虫の話かよと言いたくなります。
今回紹介するのは「ヒョウホンムシ」です。
名前からしていかにも標本ばかり食べていそうですね。相当なマニアであり偏食家であることが伺えます。コレクターの方々には親の敵の如く憎まれていることでしょう。こんなところでも人と虫の争いは続いているのです。
・・・と思いきや。
実はこの虫、名前に反して標本を食べることはあまりないようです。
むしろ標本を食べる虫としては「カツオブシムシ」や「チャタテムシ」がその筋では知られてる様子。この二種は剥製や書物なども食べてしまうため「文化財害虫」とも呼ばれ、貴重な資料を収蔵する博物館では要注意対象とされています。
一方ヒョウホンムシはというと、標本はそこそこに米や毛織物が主食のようです。厄介であることには違いありませんが、何とも拍子抜けですね。
では何故ヒョウホンムシと名付けられたかと言いますと、まあ標本によくくっついてるのを見つかったからなんですね。別にバリバリ食い荒らすからとかじゃないようです。
生物界にはニンジャスレイヤー並の直球キラキラネームを付けられたちょっと可哀想な子たちがちらほらいますが、ヒョウホンムシはその中でも名前のせいであらぬ誤解まで受けている一段と可哀想な子なんです。
名前なんて所詮人が勝手に付けたもの。モルフォチョウのように名は体を表す場合もあれば、そうでない場合もある。先入観に捕われず、冷静な視点で見て物事を判断していきたいと僕は思いました。
良い感じに締まったので今日はこれで終わりです。